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感性の法則:第一話『マコトとエイジ』

2009年3月14日(土)―

テレビ画面には埼玉ダイヤモンズvs東京FCの生中継が映し出されている。



白いユニフォームのDFが簡単に赤いユニフォームの34番にかわされる。
ゴール前でフリーになった34番は自分で狙うこともできたが、
後ろから追い越してきた背番号10のブラジル人に、GKを嘲笑うかのようにラストパス。
10番の前にはゴールしかない。

ズドン!!

赤い10番は、無人のゴールに強烈なシュートを叩きこむ。
「俺たちは強い。お前らは弱い。」
そう言わんばかりのゴール。

後半38分。1-3となるトドメのゴール。

10番のゴールにホームの赤い観衆は沸き、
青と赤のアウェースタンドは悲壮な雰囲気が漂っている。




…負けた。
その瞬間を自宅のテレビで観ていたマコトは率直にそう思った。

その約10分後、予想通りの結末が訪れた。
開幕から2連敗。

テレビの中には、開幕戦から2試合続けて出番のなかったエイジがいた。
何を考えているのか。画面の中と外では分からない。
だが、少なくとも不満に感じているのは分かる。

一つ年下の埼玉の34番、山川清彦は高校時代に対戦経験がある。
U-17の日本代表でもマコトやエイジと一緒にプレーしていた。
背番号10は山川だったが、スタメンで試合に出ていたのはエイジだった。
山川に負けた、と思ったことはマコトもエイジも一度もなかった。

格下と思っていた存在の活躍をベンチから見届ける。
プライドの高いエイジが満足している訳がない。

デビュー戦でゴールを挙げ、チームの上位進出に貢献したルーキーシーズン。
飛躍の期待される2年目だった。
ケガもない。周りとの連携にも磨きがかかってきた。
なのに出番がない。

1-4で大敗した開幕戦の後にエイジからメールが着た。
「俺が出てれば勝ってた。」
たった一言に、全てが込められていた。

だが、エイジのことをよく知るマコトは、そう思わなかった。
去年のエイジの活躍もマコトからすれば偶然にしか感じなかった。

―エイジは俺の影を追っている。
マコトはエイジのプレーを観る度に、そう感じている。

マコトとエイジのコンビは無敵だった。
エイジのパスをマコトが決める。
マコトが、ここにパスを出せと思う0.1秒前には、そこにパスが着た。
エイジが、そこに走れと思う0.1秒前には、そこにマコトがいた。
2つの感性が1つになったとき、日本国内に敵はいなかった。

しかし、マコトはサッカーを辞めた。
その原因となった、あの事件。
いや、マコトの中では事件ではなく、単なる事故だった。

それでもエイジはその責任に縛られている。
そのため、マコトのプレーまでしようと考えている。
その結果、終盤だけで5ゴールという結果を得たが、
窮屈なサッカーをしているようにマコトには見えていた。

マコトとエイジを率いた現・東京FCの城田監督も同じことを想っているのではないか?
一度、エイジと話す必要があるな。
明日はオフだろうから、連絡してみよう。

そんなことを考えていると、携帯が鳴った。

トーコからだった―


つづく。

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